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2004年6月6日

不定期連載
『実録!爆音狂咲』 其の壱   尺八朗 作

俺は「松の字」勿論、通称だ。
「渡辺興業」という東京都下の構成員10名にも満たない小さな組でちんけな極道をやってる。
元々、極道になるつもりも又、そんな度胸も無かった。
昔、渋谷でブラブラしてる所、オヤジ、つまり今の組長に拾われたって訳だ。
とあるパーラーでバニラソフトクリームを頼んだ所、 白い部分にほんのちょっと茶色のチョコの筋が混じってたんで 俺は少々の返金をかなりの大声で要求していた。
早い話がカツアゲだ。
あまりに情けない姿だったのか見るに見兼ねて止めに入ったのが 野球の新庄選手に似ているグラサンに黒いスリーピース着た方、
つまり今の組長だった訳だ。
ヤサも無かった文無しの俺はそれ以来、構成員として訳も分らず懸命に組長に尽くして来た。
組長は昔ながらの博徒で侠気もあり俺も組長の為なら命も…と思いたいんだが 一つだけ、どうしても付いていけない所があり日々頭が痛い。
それは組長の趣味だ。
クマのアニキは当然、俺より組長と付合いが長いせいか、 同じ穴のムジナだ…
今も組長の部屋からはCDに合わせ2本のサックスが爆音を轟かせている。

突然、大きな音で物が倒れた様な音と共に組長の大声が聴こえた。
「馬鹿野郎!そうじゃねぇだろうっ!」
まずい、又、始まった…
俺は慌てて組長の部屋に飛び込む。「失礼しやすっ!」
案の定、パンツ一枚でサックスを持った組長がグラサンの奥から 首に蛇を巻き付け同じくサックスを持っているクマのアニキを睨みつけている。
「いや、オヤジさん、お言葉ですがココはB♭でもいいんすよ!」
クマのアニキも負けていない…が、この人、何でいつも首に蛇を巻いているんだ…
しかも青大将‥もっと、こう何ていうか、南米産の格好良いヤツとか巻けばいいものを‥
「あん?B♭だぁ、おう!クマ!テメェいつから、そんなキタネェ手を  使う外道に成り下がったんだ?あん?あん?あんっ?あおう?」
まずいな、組長の血圧かなり上がっちまってる。
その証拠にパンツ膝元まで落ちちゃってるよ。
でも何でこの人サックス吹出すと何時もパンイチなんだよ‥

クマのアニキは憮然として壁に掛かってる飯尾パーなんとかいう やはりサックスを持った黒人の額縁写真を見つめている。
「おうっ!松の字ぃ、オメェもそう思うだろっ?あん?」
まずい、組長の鉾先は俺に向って来やがった‥
「ヘイッ!!そうです!」
俺は何の事かさっぱりだが即、頭を下げる。
「ほぉれ、見ろっ、やっぱココはドリアン1発よ!あん?」
その時だった、俺の兄弟分のマサルが部屋に飛び込んで来たのは。
「テェヘンでーす。来ました、来ました、来ちゃいましたぁあ!」
「おう、どうした?一体、何が来やがってんでぃ?イリナサケの!」
イリナサケとはマサルの組内だけでの通称だ。
マサルは元々、神奈川のとある族の上がりで盃を貰う前に 度胸のある所を見せようと自分で左上腕部に「人情」のモンモン(入れ墨)を 入れたのだが良く見ると「入情」になっていたのだ。

「あのね、京都からの客人が来ちゃいましたよぉ〜。」
マサルが屈託の無い笑顔で平然と言う。
「ん〜?そりゃ明日の間違いじゃねぇのか?」
組長、どうでもいいから早くパンツ履いてくれよ‥
相変わらずの笑顔でマサルが言う。
「いえ、今日来たから明日じゃ無いでーす。」
クマのアニキが楽器をケースにしまいながら 「ま、来たモノは仕方ありませんな。」と何事も無かった様に 首の青大将を撫でている。
ん?もう死んでないか?青大将‥
組長も仕方なく楽器を降ろしスーツに着替え直している。
俺はとにかく大音量で鳴っているCDを止めようとする。
「どうでぃ松の字ぃ?この曲よ〜、あん?」と組長がやっと笑顔に戻り俺に聞く。
やれやれ、何とかなりそうだ。
「いいっすねぇ、ナベサダっすか?」
ビターンッ!! あ、力一杯、平手打ち‥
「馬鹿野郎っ!!メシオだぁ、あん、テメエ!殺すぞっ!あん?」
ああ…飯尾パー何とかか‥もう覚えられねぇんだよな…
嫌だな、俺、音楽の事サッパリだからなぁ…

組長、音楽の事になると仁義も何も見境無くなっちまう。
この前もやっと手打ちになった組のシマウチのクラブで 手打ちの後の乾杯って時、クラブで演奏してた 生バンドのキメのフレーズが違うってイキナリ、 チャカ出して皆殺しにしちゃうし‥
この癖さえ無ければ本当に立派な博徒なんだが。

とにかく気を取り直し一同、京都から到着した 「酔いどれの今」という客人を迎える準備に取り掛かる。
何でも西の方で敵対しあってる両方の組から同時に仕事を 受け、挙げ句、かなりの数のタマを取り、取引きのブツも金も全て 持って全国逃げ廻ってた後、こっち(関東)に流れて来たらしいが 当然、何処の組も受け入れ無かったという、とんでも無いヒットマンらしい。
そいつを何を思ったかウチの組長が引取る事になったそうだ。
どうにも嫌な予感がする。
そういう「アブレ」(破門者)は全国何処の組でも引取ったりしないのが 極道の世界では常識なのに、組長はむしろ嬉しそうだ。
俺には妙に引っ掛かる。何かあるはずだ‥

以下続く(要望があればね…)

※尚、登場人物、団体名は全て作者の創作であり、実在の人物、団体名とは一切関係ありません。
(あると困るんです‥)


(松尾 ひろよし)



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